”初回”という言葉の魔力


”初回”・・・この響きだけで体が反応してしまう人も珍しくないだろう。

たった2文字の言葉に多くの人間が条件反射のように反応してしまうのはなぜなんだろう。

どうして気がついたら商品に”初回”の文字をつけとけば売れるようになったのだろう。

そもそも”初回”というのは”最初だけ””一番初め”といった意味があるだけでそこに価値なんてものはなかったはず。それなのに気がついたらそこに価値が生まれてた。

そして過去の”初回”にまで価値がついてしまった。

”初回”という言葉によって売れるようになったものはたくさんある。

しかし僕は、ここにこそ現在の消費不況の原因があるのではないかと思う。

モノが売れなくなった原因、それは初回でないと売れなくなったからだと思うのです。

簡単に説明すると

初回のモノが売れる=通常のモノが売れなくなった

だと思うのです。

これを詳しく説明すると

新製品が発売される→欲しくなる→初回仕様が出る→人々の視線は初回の方へ→初回発売時に群がる→通常仕様が発売されるがほとんどの人の目は初回の方へ→初回を巡っての高額取引→初回で手に入らないならもういいや→通常仕様が売れない

こんな感じです。

だからこそロングヒットというものが生まれにくくなり、ひいては商品寿命そのものの低下へと繋がるのです。

つまり、”初回”という言葉は諸刃の剣だと僕は考えるのです。

”初回”とつけとけば確かに最初は売れるかもしれない。

しかし、例え初回出荷分が売れたとしても2次以降の出荷分が売れる可能性は極めて低いのです。

つまり、僕にとって一番身近なものであるゲームソフトを例に取ると、ほとんどの人はそのゲームソフト自体が欲しいのではなく、”初回”と頭に付いた物が欲しいだけというわけです。

例えばですね、あるゲームの初回版が2000円増しでフィギュア付きだったとしましょう。

これは”初回”だけのものなので売れるでしょう。

しかし、ゲームと別売りで2000円でフィギュアを売ったとしましょう。

この場合のフィギュアには”初回”とはついていないので欲しがる人もそれほど多くなく全く売れないのです。

最近のゲームは頻繁にフィギュア付きを割高で販売していますがこれを別にすると欲しがる人は相当数減ってしまうと思われます。

つまり、これを計算式で表すと

あまり欲しくない物+どうでもいい物=誰もが欲しがり、争奪戦が起こるほどの人気商品

となるわけです。

これは企業にとって喜ばしいことなのでしょうか?

自分達が一生懸命製作したものの本質をしっかりと見てももらえないのにこのような形で商品を販売することは正しいことなのでしょうか。

僕の友人なんてゲーム内容は愚か、タイトルも知らなくても”初回”やら”限定”と付いたものを手当たり次第に買って全く開封すらしていないのです。

果たしてこういう人たちに買ってもらうことが本当にその企業のためになるのでしょうか。

もし、買ってもらった商品が全てこんなことになってて、そのゲームについて話してる人がネット上にいなくて誰にも遊んでもらえていないことがわかったとしたらどう思いますか?

それは本当に正しい”世の中の在り方”なのでしょうか。

今一度、”初回”とついていなかったあの頃へと戻る時なのではないでしょうか?

それこそが消費不況脱出への第一歩なんじゃないかと僕は思うのです。

今一度言います。

CD、本、ゲームソフト、飲料、食品、その他いろいろ、売れなくなってしまった”消費不況”の原因は人々の”初回慣れ”にこそあるのです。

”初回”に慣れてしまったこそ初回じゃないと満足できなくなってしまったのです。

それは僕自身だって例外じゃありません。

元々欲しいものは最初に手に入れるタイプでしたが別に今じゃなくても後から買えばいいやって思ってましたが”初回”ってついちゃうと『今じゃないと手に入らない』って思っちゃって最初に買いたくなりますもの。

それが自分の大好きなものならなおさらです。

そういうモノに流されないようにしている僕だってそうなんです。

そうじゃない人たちはもっと”初回”に弱いはずです。

だからこそもう一度、”初回”のなかった頃へと戻さなくてはならないのです。

もう、物心ついたときから”初回”に囲まれている世代だっているのです。

このままではますます”初回”とついたものしか売れなくなってしまうでしょう。

 前の画面にもどる