ファミコンが日本をこう変える!
新・情報ネットワーク社会の誕生
この本はファミコンをようやく実像を露にしてきた本格的なホームコンピューティング時代の尖兵として捉えて、それを操るしたたかな文明開化の担い手たちの戦略を垣間見ることを狙いとしています。
この本、ファミコンにおけるコンピューターの未来性やファミコンとはどういうものかということについて書いてあるんですが今読むと下手なファミコン漫画よりもよっぽど笑える上にかなり勉強になりました。
ファミコン世代ど真ん中でない僕にとってはこういう本を読む事こそが当時を知りうる唯一の手段だったりします。
では内容の説明に入りましょう。
まず、ファミコンがたったの4年で800万台も売れた驚異的なゲームマシンだと
言っているのですがその例えがすごいです。
ファミコンって黒船だったんですね
ということはファミコンを広めたコロコロはペリーですか。
そんなこと今まで考えた事もなかったです。
そしてファミコンは次代を担う子供たちをコンピューターにさわらせる役目を果たしたそうです。
そのあとはファミコンは子供の敵か?について書いてあります。
これはまあ、よくある親達のバッシングについて書かれているんですけど当然、ファミコンにもあったんですね。
しかしその内容が今では爆笑ものです。
両手の親指ばかりを酷使してボタンを押し続けるという単純な行為に没頭することが、子供たちの思考を短絡的なものにしてしまうのではないかという危惧が、教育の現場から囁かれはじめている。
素朴なシューティングの反復が、人間の思考に何らかの影響を及ぼす可能性は、すでに幾人かの児童心理学者によって指摘がなされている。
この文を読んで『どっかで聞いた話だな?』って思っていたら
あっ、これって携帯電話だ!
しかしシューティングはボタンとともに頭も必要とされるので叩かれるなら携帯電話のほうが確実だと思います。
携帯電話なんてもはや頭さえも必要とせずに使っている人もいるぐらいです。
なのにこんな話はいつの間にか立ち消えていました。
そのあとは代表的なゲームのパターンが紹介されています。
反射神経ゲーム
反射神経を極限まで昂揚させようという狙いを持った様々な障害物や敵の攻撃をものともせずにただひたすらゴールを目指す単純なもので人間の破壊本能を充足させるのに巧みなのが攻撃型反射神経ゲームで逃げることを目的としているのが逃避型反射神経ゲーム、スポーツや乗り物の運転を模したゲームはスポーツ型反射神経ゲームだそうです。初めて聞きました。
例として攻撃型はスーパーマリオブラザーズ、逃避型はデビルワールド、スポーツ型はゴルフが挙げられています。
アドベンチャーゲーム
物語要素の強いゲームで、ストーリー展開に応じて時には敵と戦い、時には謎を解くことを迫られながら隠された目標なり人物なりを捜し出すという形態であり、例としてゼルダの伝説が挙げられている。
ロールプレーイングゲーム
そうか、この時はロールプレイングのことをロールプレーイングと言っていたのかなんてことは置いといて
これはアドベンチャーゲームと類似しておきながら違うところはストーリー自体を主眼に置いていてプレーヤーに複雑な思考を要求しているそうです。
しかしストーリーの展開においても、例えば目的地に向かう旅費をかせぐために、銀行強盗を働いたりすると、「道徳的に誤ったことをした」ことによるマイナス点がつけられたりするなど、プレーヤーの行動や、時には心理状態にまで干渉してくる場面が用意されているものも出てきている。
という文章があるんですけど僕にはこの文章の指すゲームが何なのか心当たりがないのですが。
その次には「ファミコンのせいで外で遊ぶことが本当に少なくなったのか?」みたいなものが書かれています。
そこで親から何かと言われることが多い「自他ともに認めるファミコン好きの子供たち」にアンケートをとっているのですがこのアンケートの項目がすごい。
学年、性別、性格、家族の職業、所有するファミコンソフトの数、ディスクシステム(当時のカートリッジの何倍もの容量を持つディスクで遊ぶための機械)を持っているか、ソフトの貸し借りをするか、1週間のプレー時間は?、ファミコンをするときの約束事はあるのか、勉強の邪魔になるか、ファミコンソフトの情報をどこから得ているか、ファミコンに対する今後の希望、ファミコン以外によくする遊び、友人は多いと思うか、得意科目、習い事、好きなスポーツ、アニメの1日の視聴時間と好きな内容、歌ったり、演奏したりするのが好きかと好きな音楽となんかもう細かすぎます。よくこんなアンケートに答える子供がいたと思います。
その後はコンピューターの通信機能についての説明が続いてファミコン・ネットという聞きなれないものの説明に入る。
この「ファミコン・ネット」というものですがこれほとんど今の「インターネット」と何ら変わりがないものです。
つまりこの著者の頭の中にはこの当時に「ファミコンを使ったネットワーク」というものが見えていたことに他なりません。下手すれば今よりもさらに先に行っているかもしれません。
しかし実際にこの当時にあったファミコンのネットワークなんて「ディスクファックス」程度なので結局現実にはなりませんでしたが例えばBBSの書き込みの送信時間がパソコン通信の100分の1になったそうです。
では、なぜファミコン・ネットワークが普及しなかったかというと「ディスクシステムが普及しなかったから」だそうです。
ディスクシステムを普及させるにはディスクのソフト自体に新しい楽しさや刺激に満ちたソフトが必要だそうです。
そしてディスクと本とテープが入ったパッケージボックスが生まれたそうです。
それらのソフト自体が全然売れませんでしたが・・・
このソフトの狙いはこうだったそうです。
ディスクのゲームを進めるためには多くの謎を解く必要があり、その謎は本やカセットテープに散りばめられているために子供たちはどうしても本を読んだりカセットテープを聴いたりしなければならない。
これによって子供たちは長時間同じソフトに向かっていても一向に飽きが来なくなるそうです。
しかしこんな思惑があれらのソフトにあったなんて僕はこれまで聞いたこともなかったことから見事に外れたのだと思います。
ファミコンネットワークの可能性の1つとして「全国の子供たちがネットワークを通じてゲームの得点を競う」というのがあるそうです。
これ、今では当たり前のことなんですが当時出来ていれば今頃シューティングはまだ健在だったんじゃないかと思います。
次に「ファミコンとラジオのタイアップ」とあるんですがこれはまさに「サテラビュー」だと思います。
サテラビューというのは衛星からの配信にすることで大規模なイベントが開かれたりしたSFの周辺機器でキャッチフレーズは「空からゲームが降ってくる」でした。
サテラビューで大好評だったファミコン探偵倶楽部の外伝が移植されないのは声を今では超有名人のある人がやっていたからだと思います。
次に「アニメやコミックのキャラクターにファンレターを出すと返事がくる」とあるんですがこの時の返事がアニメーションになっているという未だに完成の糸口すらも見つかっていないものだったりします。この時のアニメーションを作るために「ファンタビジョン」というソフトを作っていたそうですがそんなソフト聞いたこともないのできっと途中でどこかにいってしまったんでしょう。
このソフトが完成すればファミコンで交換日記が出来るようになったそうです。
ということはこれは発売中止ソフトに入るという事ですか?
ぜひ出してほしかったです。
次に「ディスクファックスで音楽教室を開く」というのがあるんですが本当にこんなことがファミコンで出来ていたら世の中は確実に変わっていたと思います。
どうやらディスクシステムが普及すればこれだけのことが出来たようです。
でも普及しなかったからなくなった。そういうことだそうです。
その次にファミコンネットの初舞台となったゴルフイベントについて書いてあるんですが以下はその説明です。
ファミコンネットワールドゴルフとの名称のもとに、昭和62の1月14日より
JAPAN CUP、US CUP、ENGLAND CUP、AUSTRALIA CUPの4コースを順次発表し、計4大会が催される。
・各大会は72ホールのスコアを競い、スコアーの少ないほうがよい成績となる。
・大会の応募方法はディスクファックス登録店に行き登録する。
・4大会終了後、4つの大会に参加した人を集計し、トータルトーナメントとして結果を出す。
すなわち計5大会となる。
・ディスクカード1枚では一名応募資格があり、二名以上応募希望の場合はディスクカードを各々購入してもらう。
・原則として一つの大会では一人一応募とする。
・各大会入賞者には賞品が贈られる。
このイベントにおけるディスクカードの役割
・カードは両面で1ゲームとする。
サイドA プログラム、コースデータ(ディスクライターにより別コースに書替可能。
サイドB 氏名、TEL番号(IDコード)(ディスクライターで書替可能)、住所、年齢、性別、スコアーデータ、上位ランキングスコアー(データサービス)
・IDコード(氏名、TEL番号)はテレビ画面上で製作し、ディスクカードにSAVEする。
・18ホール×4ラウンド=72ホール分のスコアーをディスクカードに記録する。
・イベント用カードは灰色カードとなり、従来の黄色との互換はなくディスクライターでの書替はできない。但し、イベント用ゲームソフトに書替可能。
最初の応募(ディスクファクスでプレイデータを送ること)でディスクカードのIDコード書替が不可となるが、応募は複数回可能である。
・応募した際に前日集計時の全国での上位ランキング者のスコアーがディスクカードにデータサービスされる。
・イベント終了後、ディスクファックスにセットすると最終順位データが書き込まれる。
・イベント用カードの価格、ディスクライターでの書替価格は未定である。
このイベントにおけるディスクファックスの役割
・システム告知のためのデモ表示。
・イベント参加者のスコアーをモニター表示し、その内容をメモリーに蓄積する。
・イベント参加者のデータを蓄積(一日分)し、決められた時刻(多くは夜間)に任天堂本社ホストコンピューターにデータ転送する。
・前日までの上位ランキング者スコアーを任天堂ホストコンピューターより受け取り、イベント用参加者カードにデータサービスとして書き込む。
・受付済みカードのIDコードを固定し、IDコードの変更ができないようにする。
・応募されたディスクカードにデータ受理信号を書き込む。
・イベント終了後、応募した参加者の最終順位データをディスクカードに書き込む。
・イベント終了後、応募した参加者の最終順位データをディスクカードに書き込む。
このイベントにおけるホストコンピューターの役割
任天堂本社に設置されたホストコンピュータは、ディスクファックスで受け付けられ、蓄積されたデータを決められた時刻に一般公衆電話回線を利用して集め、集計した上結果(上位者ランキング)を再びディスクファックスにデータ返送する。
大会受付期間終了後すべての参加者データを整理し、入賞者を決める。
応募者全てのデータを整理し、データベース化する。
順位カード郵送のため住所、氏名を自動プリントアウトさせる。
各々のディスクファックスにそこで応募した参加者の最終順位データを返送する。
と、以上がこのイベントの説明ですがいくつかは実際と違っていたりしますが
この説明にはものすごく大きな事実との違いがあります。
それは
実際には5大会中2大会しか開かれていないということです
実際に発売されたのは「JAPANコース」と「USコース」の2本です。
つまりこの他の2本は発売すらもされていないということです。
しかしこのシリーズが他に2本もあったなんて初耳です。現在の歴史に残っていません。
このことから予想されるにきっと思ったよりも参加者が少なかったのではないかと思います。
つまりディスクファックスは
最初の一歩でつまづいてしまったのだと思います。
これでは後に続く壮大な計画なんて始めようがありません。だからディスクファックスは店頭から消え、任天堂もディスクしか出さないと言っていたのにカセットに戻ってしまったのだと思います。
この計画、やるには早すぎたのではないのでしょうか
ちなみこの「ファミコンネット」が失敗した事でこの本の存在意義は8割がた無くなってしまいます。
なぜならこの本は「ファミコンネット」が成功した先の未来について書かれています。
というわけでこの本は任天堂の過去の過ちの暴露本ではないのでしょうか。
最後にこの本を読んで僕の思った事を一言だけ
任天堂よ、あなたのやろうとしたことはあまりにも早すぎたために時代がついてきてくれなかった。
しかし今これらの事をもういちどやってみたらどうだろうか?